まず、短く答えると
「何時までなら大丈夫」という、全員に共通する時刻はありません。カフェインの影響は、飲む量、寝るまでの時間、体質などで変わります。眠りが気になるなら、まず夕方以降のカフェインを控えることから。寝つけたかだけでなく、夜中の目覚めや翌朝の休めた感じも一緒に見ます。好きなコーヒーをすべてやめると決める前に、遅い時間の一杯を変えてみる方法があります(厚生労働省の睡眠情報)。
この記事の要点
- カフェインは、飲む時刻と量の両方で眠りへの影響が変わる
- 「寝つけた」という感覚だけでは、睡眠への影響をすべて判断できない
- コーヒー以外のお茶やエナジードリンクにも、カフェインが含まれる
- まずは遅い時間の一杯を見直し、数日間の眠りと体感を振り返る
- Apple Watchの睡眠スコアやHRVだけで、カフェインが原因とは決められない
1. 「午後○時まで」より、寝るまでの時間と量を見る
午後3時のコーヒーでも、午後10時に寝る人と、午前1時に寝る人では、寝るまでの時間が違います。同じ時刻に飲んでも、小さなカップ一杯と、大きなボトルを飲み続ける場合では、摂る量が違います。
厚生労働省は、睡眠のために夕方以降のカフェインを控えることを勧めています。これは生活を見直すときの出発点です。「夕方より前なら、どれだけ飲んでも眠りに影響しない」という意味ではありません(厚生労働省の睡眠情報)。
また、カフェインへの敏感さや、体内のカフェインが減る速さには個人差があります。家族が夜に飲んでも眠れるからといって、自分にも同じように当てはまるとは限りません(FDA)。
まずは「最後に飲んだ時刻」「飲み物の種類と量」「寝る予定の時刻」を並べてみましょう。夜勤などで日中に眠る人は、夕方という時刻だけでなく、自分が眠る時間との関係を考えます。
2. 眠気が軽くなることと、睡眠不足が解消することは違う
起きている間、脳ではアデノシンという物質が増え、眠りに向かう働きに関わります。カフェインは、この物質の働きを妨げることで、眠気を感じにくくします(米国国立心肺血液研究所)。
コーヒーを飲んで頭がすっきりしても、その間に眠ったわけではありません。「もう一杯で乗り切れそう」と感じる日が続くなら、飲み方とあわせて、眠るための時間を取れているかも見直してみましょう。
3. 「飲んでも眠れる」だけでは、わからないこともある
2023年に発表された、24の研究をまとめた分析では、カフェインを摂った条件で睡眠時間が短くなる傾向が見られました。睡眠時間の解析では平均で約45分短くなりましたが、飲む量や時刻の違う研究をまとめた数字です。「コーヒー一杯で、誰でも45分眠りが減る」という意味ではありません(Gardinerら、2023年)。
その分析に含まれる2013年の実験では、成人12人が、カフェイン400mgを寝る直前・3時間前・6時間前に摂る条件と、カフェインを含まない錠剤を摂る条件を比べました。6時間前でも機器で測った睡眠時間は短くなりましたが、本人が睡眠日誌で答えた睡眠時間には、統計上はっきりした差は出ませんでした。感覚と測定の結果が、必ず一致するわけではないことがわかります(Drakeら、2013年)。
2025年掲載の研究では、成人男性23人が、100mgまたは400mgを寝る4・8・12時間前に摂る条件を比べました。カフェインを含まない錠剤の条件と比べると、400mgでは12時間前でも深い睡眠の減少などが見られました。一方、100mgでは、調べた睡眠指標に統計上はっきりした差は出ませんでした(Gardinerら、2025年)。
ただし、これは「100mgなら誰でも大丈夫」「全員が12時間前から控えるべき」という結果ではありません。後者の研究は若い成人男性が中心で、朝には普段の摂取量に相当するカフェインも摂っています。400mgは追加で一度に摂った実験の量であり、いつものコーヒー一杯と同じ条件ではありません。
日常で参考にしたいのは、飲む量と時刻の両方が関係し、寝つきだけでは影響を捉えきれないという点です。眠りを振り返るときは、夜中の目覚め、睡眠時間、翌朝の休めた感じも見てみましょう。
4. 毎日飲む人でも、同じように影響する?
結果が違う研究もあります。2021年の試験では、普段からカフェインを摂る健康な若い男性20人に、150mgずつ1日3回、9日間続けて摂ってもらいました。最後の摂取から就寝まで8時間空ける条件では、カフェインを含まない錠剤の条件と比べて、睡眠時間や本人が感じた睡眠の質にはっきりした差が出ませんでした(Weibelら、2021年)。
ただし、一部の脳波には変化があり、「影響がまったくない」とは言えません。普段から飲み、よく眠れている男性を対象とした小さな研究なので、カフェインに敏感な人にも同じとは限りません。
一度に多く摂る場合と、日中に分けて摂る場合。普段から飲む人と、あまり飲まない人。こうした条件も違うため、研究の数字をそのまま自分の締め切り時刻にせず、今の飲み方と眠りの困りごとを一緒に考えましょう。
5. お茶に替えるときも、種類を確認する
「コーヒーをやめて、お茶にした」という場合も、カフェインが減っているとは限りません。緑茶や紅茶、エナジードリンクなどにも含まれます。同じ飲み物でも、商品や淹れ方、容器の大きさによって量は違います(FDA)。
商品に含有量が書かれているなら、「100mL当たり」なのか「一本当たり」なのかを確認します。たとえば、100mL当たり20mgの商品を500mL飲めば、合計は100mgです。これは計算例で、特定の飲み物の標準量ではありません。
含有量がわからなければ、「午後3時、いつもの店の小さいラテ」のような記録でも構いません。最初からすべてを正確に計算しなくても、自分の飲み方を振り返る手がかりになります。
デカフェはカフェインを減らした飲み物ですが、ゼロとは限りません。カフェインを避けたい時間帯は、商品の表示を見て選びましょう(FDA)。
6. まずは遅い時間の一杯から、変えてみる
一度に生活全体を変えようとすると、続けるのが大変です。ここでは、無理なく振り返るための一例を紹介します。
いつもの飲み方を短く残す
コーヒーやお茶の種類、量、飲んだ時刻をメモします。思い出せる範囲で十分です。記録のために、気になる飲み方を続ける必要はありません。
遅い時間の一杯を選ぶ
たとえば夕方のコーヒーを、カフェインの少ないものや含まない飲み物に替えます。一杯を小さくする方法もあります。休憩する時間は、そのまま大切にして構いません。
翌朝は、先に体感を書く
「休めた感じ」「夜中に目が覚めたか」「朝の眠気」を一言だけ残します。Apple Watchを使っているなら、あとから睡眠時間などの記録も見ます。
数日から1週間ほどで振り返る
一晩だけで結論を出さず、似た生活の日を見比べます。残業、飲酒、体調などが普段と違った日は、そのことも添えておくと振り返りやすくなります。
7. Apple WatchやFeelmoでは、点数より生活の流れを見る
Apple Watchを使っているなら、睡眠時間や夜中に起きていた時間を、自分のメモと並べてみましょう。記録の見方は、末尾の参考資料にあるAppleサポートの案内でも確認できます。
ただし、「深い睡眠が少なかったから、昨日のコーヒーが原因」とは決められません。Apple Watchの睡眠段階はセンサーからの推定です。一晩のスコアやHRVも、カフェインの影響だけを取り出して示すものではありません(Feelmoの睡眠ガイド)。
Feelmoのひとことメモを使うなら、「夕方のコーヒーをデカフェに」「朝は少し眠い」など、自分で気づいたことを短く残せます。紙や、普段使っているメモでも構いません(Feelmoのこころ記録ガイド)。
見たいのは、点数が上がったかだけでなく、自分にとって過ごしやすい飲み方が見つかるかです。記録が負担になるなら、毎日詳しくつける必要はありません。
8. 飲み方を変えても、眠りの困りごとが続くとき
眠れない、十分に眠る時間を取っても休めた感じがない、日中の眠気で仕事や家事に困る。こうした状態が続くときは、コーヒーだけの問題と考えず、医療機関へ相談してください。記録がそろうまで待つ必要はありません(厚生労働省の睡眠情報)。
妊娠中・授乳中の人や、持病・服薬のある人は、カフェインをどの程度控える必要があるか、医師や薬剤師に確認しましょう(FDA)。
参考資料
- Gardiner C, et al. (2023). The effect of caffeine on subsequent sleep: A systematic review and meta-analysis — Sleep Medicine Reviews, 69, 101764. DOI: 10.1016/j.smrv.2023.101764
- Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T. (2013). Caffeine Effects on Sleep Taken 0, 3, or 6 Hours before Going to Bed — Journal of Clinical Sleep Medicine, 9(11), 1195–1200. DOI: 10.5664/jcsm.3170
- Gardiner C, et al. (2025). Dose and timing effects of caffeine on subsequent sleep: a randomized clinical crossover trial — Sleep, 48(4), zsae230. DOI: 10.1093/sleep/zsae230(オンライン公開:2024年)
- Weibel J, et al. (2021). The impact of daily caffeine intake on nighttime sleep in young adult men — Scientific Reports, 11, 4668. DOI: 10.1038/s41598-021-84088-x
- 寝ても疲れが取れないなら要チェック!あなたの睡眠の質 大丈夫ですか? — 厚生労働省
- How Sleep Works — Your Sleep/Wake Cycle — 米国国立心肺血液研究所(NHLBI)
- Spilling the Beans: How Much Caffeine is Too Much? — 米国食品医薬品局(FDA)
- Apple Watchで睡眠を記録してiPhoneで「睡眠」を使う — Appleサポート
