まず、短く答えると
緑の光は、脈に伴って皮膚の中の血液量が変わる様子を、戻ってくる光の変化として捉えています。その繰り返しから心拍数を推定します。一方、心電図は電極で心臓の電気信号を記録します。同じ拍動に関わる測定でも、見ているものは異なります。
この記事の要点
- 緑のLEDで皮膚を照らし、戻ってきた光を受光部で検出する。
- 脈に伴う血液量の変化から、光学式のセンサーが心拍数を推定する。
- 心電図は光ではなく電極を使い、心臓の電気活動を記録する。
- 動き・装着・冷えなどで測定は乱れる。数値や判定だけで健康状態は決まらない。
緑の光は、血液に吸収される
Apple Watchの背面には、光を出すLEDと、戻ってきた光を検出する受光部があります。光を出す側と受け取る側が、どちらも手首に接する側にある「反射型」の測定です。(Appleの心拍数測定の説明、Parkら、2022)
皮膚に入った光は、組織の中で散らばり、一部が吸収され、残りの一部が受光部に戻ります。血液中のヘモグロビンは緑色の光を吸収するため、光が通る場所の血液量が変わると、戻ってくる光の量も変わります。
拍動に伴って血液量が増えると、一般に緑の光の吸収が増え、受光部に戻る光は減ります。そのあと血液量が減ると、戻る光は増える方向に変わります。この小さな明暗の繰り返しが、脈を捉える手がかりになります。

図1:光が戻る量の変化を捉える仕組み。ベージュの面は皮膚の中、赤茶色の線は血液を含む部分を簡略化した表現です。センサーの実際の配置や構造、光の到達深さ、血管の太さや変化量を示すものではありません。出典:Appleの公式説明、Parkら(2022)をもとにFeelmo編集部作図。
ここで捉えているのは、血液が何mL流れたかという流量や、血液が流れる速さそのものではありません。皮膚の中の血液量に伴う、光の変化です。心臓を光で直接撮影しているわけでもありません。
光の変化から、どうやって心拍数がわかる?
この方法は、光電式容積脈波記録法、略してPPGと呼ばれます。難しい名前ですが、「光で、血液量の変化による脈の波を捉える方法」と考えると理解しやすくなります。
受光部は、戻ってきた光を電気信号に変えます。機器はその信号から脈の繰り返しを読み取り、1分間あたりの回数に換算します。たとえば、脈の間隔が平均1秒なら、心拍数に換算して60回/分です。これは計算を説明するための例で、健康の基準ではありません。(PPGの原理:Parkら、2022)
緑のLEDの点滅そのものが、心臓の拍動を表しているわけではありません。AppleはLEDを毎秒数百回点滅させて測定すると説明しています。見えている光の点滅を数えても、自分の心拍数にはなりません。(Appleの心拍数測定の説明)
心電図は、電極で電気信号を記録する
心臓では、電気的な活動に続いて筋肉が収縮し、血液が送り出されます。その影響が脈として手首に届きます。心電図とPPGは、この一連の出来事の異なる部分を捉えています。
心電図(ECG)は、皮膚に触れた電極の間の電位差、つまり電気的な違いを記録する方法です。対応するApple Watchでは、本体背面の電極とDigital Crownの電極を使います。反対側の手の指をCrownに触れさせ、約30秒間、動かずに記録します。緑の光の波形を心電図に描き替えているのではありません。(Appleの心電図アプリの説明)
PPGでも心電図でも心拍数に関する情報が得られます。ただし、心電図のとがった波と、手首で捉えた脈の波は、形も現れるタイミングも異なります。電気活動から収縮を経て、脈が手首に伝わるまでに時間がかかるためです。(PPGと心電図の原理:Parkら、2022)

図2:同じ拍動でも、心電図は電気活動、PPGは手首の血液量に伴う光の変化を捉えます。波形は説明用に合成したもので、実測データではありません。PPGは血液量が増える向きを上にそろえています。波形の高さ・形・時間差は、診断や比較に使えません。
| 比べること | 光学式(PPG) | 心電図(ECG) |
|---|---|---|
| 使うもの | LEDと受光部 | 皮膚に触れる電極 |
| 捉える変化 | 血液量に伴う光の変化 | 心臓の電気活動による電位差 |
| 測り方 | 手首に装着して測定 | 対応機種でCrownに指を触れて記録 |
| 主な記録 | 心拍数など | 心電図の波形とリズムの分類 |
いつも緑に光る? 赤外線を使うこともある
光学式心拍センサーは、緑の光だけでなく赤外線も使います。どの光を使うかは、機種や活動の状況、睡眠中かどうかなどで異なります。緑の光が見えないだけで、心拍センサーが故障したとは判断できません。(Appleの心拍数測定の説明)
また、「光を使っているなら、心拍数以外も何でもわかる」というわけではありません。測定には、使う波長や受光部、信号の処理、機能ごとの検証が必要です。緑の光がついていることだけで、血圧や血中酸素の測定が行われているとはいえません。
動いていると、なぜ測定が乱れるの?
受光部が捉える光は、脈だけで変わるわけではありません。時計がずれたり、皮膚との接触が変わったりしても信号が変化します。機器は、その中から脈に由来する成分を取り出す必要があります。(PPGの信号とノイズ:Parkら、2022)
たとえば、次の条件は測定に影響します。値が飛んだり、うまく記録されなかったりしたときは、体の変化と測定条件の両方を確かめます。(Appleの測定精度に関する説明)
- 装着がゆるい:本体が動き、センサーと皮膚の接触が安定しにくくなる。
- 手首が冷えている:皮膚を流れる血液が減り、十分な信号を捉えにくくなることがある。
- 腕を不規則に動かす:脈とは別の動きが、光の信号に重なりやすい。
- センサーを覆うタトゥーなどがある:光の吸収や通り方が変わり、測定に影響することがある。
2017年には、男性21人に歩行・ジョギング・ランニングをしてもらい、Apple Watchと胸部の心拍計を比較した実験が行われました。歩行ではよく一致した一方、運動の強さが増すにつれて一致の程度が下がり、記録できた心拍数データの割合も減りました。(Khushhalら、2017)
これは初代Apple Watchを用いた、限られた参加者・運動条件での結果です。現在の全機種の誤差を示す数字にはできません。ただ、「心拍センサーの精度」を一つの値で表さず、機種と測った状況を確認する必要があることはわかります。
「判定不能」は、正常・異常のどちらとも違う
電極を使う心電図でも、必ず結果を分類できるわけではありません。装着や接触の状態に加え、心拍数、リズムの種類などによって「判定不能」や記録状態が良好でないという結果になることがあります。判定不能は、正常だったという意味でも、病気が見つかったという意味でもありません。(Appleの心電図アプリの説明)
心房細動で治療を受ける患者74人を対象とした2022年の研究では、最初の心電図記録の27.9%が自動分類できませんでした。これは医療機関で選ばれた参加者の結果であり、一般利用者の発生率ではありません。精度を読むときは、分類できた記録だけでなく、分類できなかった記録にも目を向けることが大切です。(Pepplinkhuizenら、2022)
また、光学式センサーによる「不規則な心拍の通知」と、心電図アプリで記録した結果は別の機能です。通知がないことや、一度の記録で洞調律と出ることは、あらゆる心臓の問題がないという保証にはなりません。(Appleの心臓の健康に関する通知・心電図アプリの説明)
日々の記録は、測り方と一緒に見る
まず、無理なくフィットさせる
センサーが手首の皮膚に触れ、本体が大きくずれないように装着します。締めつければ締めつけるほどよいわけではありません。きつすぎず、ゆるすぎない状態に調整しましょう。
気になる値は、状況を添えて確認する
歩いていたのか、座っていたのか、手首が冷えていたのかを思い出します。落ち着いて再確認できる場面なら、腕を支えて動きを減らし、測定します。1回の値だけで原因を決めないことが大切です。
心電図を記録するときは、接触を安定させる
対応機種では、腕を机や膝で支え、反対側の手の指をDigital Crownに触れさせて、約30秒間じっとします。手首と本体がきれいで乾いていることも確認します。(Appleの心電図アプリの説明)
症状を、数値や判定より優先する
動悸やめまいなど、気になる症状が続く場合は、記録を添えて医療機関に相談してください。強い胸の痛み・圧迫感や息苦しさなどがあるときは、測り直しを待たずに救急の助けを求めます。Apple Watchの心電図アプリは心臓発作を検知できません。(Appleの心電図アプリの説明)
手首の緑の光は、目には見えにくい小さな変化を、日々の記録に変える仕組みです。何を測っているのかがわかると、数字が動いたときにも、体の変化と測定の条件を分けて考えやすくなります。
参考資料
- Apple Watchで心拍数を測定する(心拍数測定の説明) — Apple サポート。2026年10月22日確認。
- Apple Watchの心電図アプリで心電図をとる(心電図アプリの説明) — Apple サポート。2026年10月22日確認。
- Apple Watchを使った運動量計測の精度を上げる(測定精度に関する説明) — Apple サポート。2026年10月22日確認。
- Apple Watch:心臓の健康に関する通知 — Apple サポート。2026年10月22日確認。
- Photoplethysmogram Analysis and Applications: An Integrative Review — Park J, Seok HS, Kim SS, Shin H. Frontiers in Physiology, 2022;12:808451. doi:10.3389/fphys.2021.808451
- Validity and Reliability of the Apple Watch for Measuring Heart Rate During Exercise — Khushhal A, et al. Sports Medicine International Open, 2017;1:E206–E211. doi:10.1055/s-0043-120195
- Accuracy and clinical relevance of the single-lead Apple Watch electrocardiogram to identify atrial fibrillation — Pepplinkhuizen S, et al. Cardiovascular Digital Health Journal, 2022;3(6 Suppl):S17–S22. doi:10.1016/j.cvdhj.2022.10.004
