Apple Watchの睡眠計測はどこまで正確か

結論から言うと、Apple Watch は眠っているか起きているか、睡眠時間の大まかな傾向を振り返る参考にはなり得ます。一方、一晩の「深い睡眠が何分だったか」を PSG(睡眠ポリグラフ検査)と同じ精度で確定する機器ではありません。

ここで大切なのは、次の3種類の数字を混ぜないことです。

  1. Appleが自社の睡眠ステージ機能を検証した数字
  2. 独立研究者が市販のApple WatchをPSGと比べた数字
  3. FeelmoのPaper 17で、心拍由来情報と時間文脈を使う研究用モデルを評価した数字(特徴設計・前処理・モデル構成の詳細は非公開)

Apple公式の開発データは1,171夜です。一方、Paper 17でApple Watch心拍とPSGが対になっている公開データは31人です。数が似て見えても、製造元の開発データとFeelmoの内部解析は別の研究です。

PSGとは?

PSGは、脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸などを同時に測り、専門家が30秒ごとに睡眠段階を判定する検査です。睡眠ステージの比較では基準になります。

Apple Watchは手首の小さなセンサーから推定します。身軽に毎晩測れる一方、PSGと同じ信号を見ているわけではありません。

Apple公式の検証は何を示した?

Appleの2025年版技術文書によると、標準の睡眠ステージ分類器への入力は加速度センサーです。HRVだけで判定しているわけではありません。呼吸に伴う細かな手首の動きを含む加速度信号から、覚醒・REM・コア・深い睡眠を30秒ごとに分類します。

Apple公式資料の集団人数記録数主な結果
開発データ858人1,171夜モデル開発に使用。独立評価ではない
開発に含めなかった検証データ166人299夜旧版の4段階κ平均 0.63(SD 0.13)
同じ検証データでのwatchOS 26更新版166人299夜4段階κ中央値 0.68(SD 0.11)
臨床PSGの別集団・更新版236人390 watch sessions4段階κ中央値 0.66(SD 0.16)

κ(カッパ)は、偶然当たる分を差し引いた一致度です。1に近いほど一致し、0は偶然程度です。ただし平均と中央値、対象集団、OSの版が違う数字を、そのまま横並びにはできません。

この資料は大規模で重要ですが、製造元による検証報告です。学習用の生データやモデルは一般公開されておらず、Apple自身も睡眠ステージを臨床用途向けとしていません。

Appleとは独立した研究ではどうだった?

2024年の研究では、睡眠障害のない成人35人が1夜のPSGに参加し、そのうちApple Watch Series 8の解析可能データが得られたのは 29人 でした。Apple WatchとPSGの一致は、睡眠・覚醒の2段階で93%、κ=0.60、4段階で75.0%、κ=0.60でした。

ただし、Apple WatchはPSGに比べ、平均で深い睡眠を43分少なく、浅い睡眠を45分多く推定しました。人数が少なく、健康な成人の1夜だけなので、年齢や睡眠障害が異なる人へそのまま一般化はできません。また、この研究はAppleによる研究ではない一方、競合製品のメーカーであるOura Ring Inc.から資金提供を受け、筆頭著者はOuraのMedical Advisory Boardメンバーでした。結果そのものと、資金源・利益相反の両方を確認する必要があります。

2026年に公表された系統的レビューも、Apple Watchは睡眠・覚醒の区別は比較的良い一方、似た睡眠段階どうしの区別は中程度から低い、とまとめています。つまり、合計睡眠時間と各ステージの分数は、確かさが同じではありません。

Paper 17は何を検証した?

Paper 17は、Appleの標準睡眠ステージ機能を再現した研究ではありません。公開コホートの心拍由来情報と時間文脈を使う研究用モデルで、PSGの5段階をどこまで推定できるかを調べた未査読の内部実現可能性研究です。具体的な特徴設計、参照範囲、前処理、モデル構成は公開していません。

Feelmo内部モデル対象macro AUROCκ結果
Walch公開Apple Watch/PSGデータ31人0.7080.221内部目標に未達
HMC臨床PSGデータ(被験者単位5-fold)35人0.7110.244同一コホート内の評価でも内部目標に未達
HMC+CAP+SLPDBの臨床PSGデータ(LODO)計67記録平均0.639(SD 0.013)平均0.132(SD 0.028)未知コホートへの評価でさらに低下

AUROCは各段階を他の段階から並べ分ける力、κは最終的な段階の一致度を見る指標です。同じHMC内の被験者分割ではAUROCが0.711でも、5段階の一致を示すκは0.244でした。学習に使わないコホートを丸ごと評価するLODOでは、平均AUROC 0.639、平均κ 0.132まで下がりました。評価方法が違う数字を、同じ性能値として混ぜないことが重要です。

3コホート計67記録の予測睡眠段階から計算した5つの睡眠指標では、PSGとのPearson相関は −0.007〜0.417 で、事前に置いた内部目標にすべて届きませんでした。別の探索的解析では最大相関が深い睡眠割合の 0.545 まで上がりましたが、改訂した内部目標にも5指標すべてが未達でした。異種データを53件から101件へ増やした別解析でもκは0.336から0.330へ変化せず、単純にデータを足せば解決する結果ではありませんでした。研究用モデルの特徴設計・参照範囲・前処理・モデル構成は、独自技術として公開していません。

Paper 17から言えること

公開データと今回の研究用モデルでは、心拍由来情報と時間文脈による5段階推定はPSGの代わりになりませんでした。これはApple標準機能の性能評価でも、「将来どんなモデルでも不可能」という証明でもありません。

毎朝、どう読めばいい?

  • 一晩の数字より、同じ端末・同じ設定で数週間の傾向を見る
  • 合計睡眠時間と、REM・コア・深い睡眠の分数を同じ確かさだと思わない
  • 「深い睡眠が少ない」1回だけで、病気や回復不足と決めない
  • OS更新でアルゴリズムが変わり得るため、更新前後の段差に注意する
  • 強い眠気、いびき、呼吸停止、不眠が続く場合は、時計の数字だけで判断せず医療機関へ相談する

参考資料

  1. Apple. Estimating Sleep Stages from Apple Watch. October 2025. 公式技術文書
  2. Robbins R, et al. Accuracy of Three Commercial Wearable Devices for Sleep Tracking in Healthy Adults. Sensors. 2024;24:6532. doi:10.3390/s24206532
  3. Lambe R, et al. The accuracy of Apple Watch measurements: a living systematic review and meta-analysis. npj Digital Medicine. 2026. doi:10.1038/s41746-025-02238-1
  4. Walch O, et al. Sleep stage prediction with raw acceleration and photoplethysmography heart rate data derived from a consumer wearable device. Sleep. 2019;42(12):zsz180. doi:10.1093/sleep/zsz180
  5. Walch O. Motion and heart rate from a wrist-worn wearable and labeled sleep from polysomnography, version 1.0.0. PhysioNet. doi:10.13026/hmhs-py35

医療上の注意

Apple Watch、Feelmo、Paper 17のモデルは、PSGによる診断を置き換えません。このページは研究結果の解説であり、診断や治療の助言ではありません。

※ この研究解説は、Feelmoアプリの有効性を検証したものではありません。

Apple Watchの睡眠計測はどこまで正確か|Feelmo Research